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【モヤっとする】減配・無配銘柄について考える

個別株(優待株・高配当株含む)

新型コロナウイルス感染拡大により、人の移動が大きく制限されているため、大企業を含めて決算発表が延期されるケースが相次いでいます。

玉突き的に、株主総会の延期を決定した企業も出始めているようで、この影響はかなり尾を引きそうです。

決算発表が延期されても、月次決算は毎月やってくるし、短信、有報が遅れると、次の四半期も遅れるだろうし、サイクルが正常化するには相当の時間を要するかもしれませんね。

そんな状況下、業績悪化による減配・無配を公表する企業が日米ともに数多くありました。

高配当企業とは言え、際限なく配当金を支払うことはできないので、業績が悪化した場合、もしくは今後の更なる業績悪化が見込まれる場合、業績が見通せないほど不確実性が高い場合に、減配or無配の判断をすることは間違っていないと思います。

ただ、なんとなくひっかかるところがあるんですよね。

先日ツイッターでもつぶやいたのですが。

このモヤっとしている点について、記載していきたいと思います。

もちろん、減配・無配になったことを指しているわけではありません笑

直近で減配・無配を公表した米国企業

米国企業と記載していますが、厳密には米国籍ではない企業も含まれていますが、その辺は気にしないでください。

これ以外にも多数ありますが、比較的著名な企業を選んだつもりです。

RDS-B(ロイヤルダッチシェル)

80年間減配知らずの高配当企業であるロイヤルダッチシェルも、今回の原油安の煽りを受けて減配するに至りました。原油先物の価格がマイナスをつけたり異常な状況下においては、迅速に経営方針を修正して、手元資金を厚くするという判断はおかしなものとは言えません。

欧州石油最大手の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルは30日、2020年1~3月期の1株あたり配当金を3分の1に減らすと発表した。同社によると減配は第2次世界大戦の時期以来で、戦後初となる。新型コロナウイルスの感染拡大と原油安で4~6月期は事業環境のさらなる冷え込みが避けられず、資金確保を優先する。

2020年5月1日付 日本経済新聞の記事より

それにしても、『戦後初の減配』って、なかなかのパワーワードですね。ここまで減配しなかったというのは、すごいの一言ですが、いかに20世紀の世界経済を原油が支えていたのか、というのを示していると思います。

dividend.com より

上記は、dividend.comというサイトから配当履歴のキャプチャをとったものになります。

6月の支給分から減配されることとなり、概ね3分の1に減額されました。とはいえ、株価も急落しているため、減配後の配当金額でも4%くらいの利回りがあります。

BA(ボーイング)

ボーイングは、世界最大級の航空宇宙機器開発製造会社であり、日本でもジャンボジェットの名前で耳にする機会は多いかと思います。航空機を製造する会社であり、戦闘機、ミサイルの開発・製造もおこなっており、軍需産業の代表格としても名前があげられます。

直近では、最新機であるボーイング737MAXが立て続けに墜落したことで、生産休止となっていたところに、新型コロナの航空需要減が直撃した形となり、業績が著しく悪化していました。

米航空機大手ボーイング(BA.N)のカルホーン最高経営責任者(CEO)は27日に開いた株主総会で、同社は向こう6カ月にかけて一段の融資を受ける必要があり、数年間は配当金を支払えない公算が大きいと述べた。

2020年4月27日付 ロイターの記事より

ということで、4月27日の段階で今後数年にわたって無配になりそう、というアナウンスがなされたました。

dividend.com より

今までは、四半期毎に1株当たり$2.055の配当を行っていましたが、2020年6月支給分から無配に転落しています。

直近で無配・減配を公表した日本企業

日本企業も無配、減配を公表した企業はいくつかありますが、その中から比較的著名な企業をピックアップしてみます。

JAL

過去に一度上場廃止になっていますが、その時に株主でした。

大した金額ではなかったのですが、投資金額が0になった損失率100%の銘柄として、私の中では強く記憶に残っています。個人的には、航空株と不動産株にはトラウマがあるので、なかなか買えません笑

今回は完全に外部環境の大きな変化によるところなので、致し方ない部分もありますが、4月30日付で、期末配当を無配とする旨のリリースを出しています。

2020年4月30日付 開示資料より

三菱ケミカルHD

三菱商事、三菱UFJ銀行等、名だたる企業、高配当企業が並ぶ、三菱グループの一員であり、高配当株であり、10万円以下で買える銘柄として、個人投資家に人気の高い銘柄でもあります。

保有はしていませんでしたが、私も監視してい銘柄で、機会があれば購入したいなと考えていました。

三菱ケミカルについては、業績予想の修正と一緒に開示を行ったため、少し切れてしまっていますが、減配する旨のリリースを4月28日付で出しています。

2020年4月28日付 開示資料より

第2四半期末においては20円の配当支払を行っていますが、期末の配当は20円予想から8円へと大幅減配となりました。

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で、モヤっとポイントは?

ここまで、日米の減配・無配企業を2社ずつピックアップしてみてきましたが、相違点は何でしょうか?

共通している点としては、減配・無配を発表した企業であるという点です。これは、その要素で抽出しているので当然なのですが。

減配・無配の公表時期

異なる点は、減配・無配をいつ公表したのかという点です。

先ほどの4社を表にまとめると、下記の通りとなります。

企業名権利確定日減配・無配公表日権利確定日の前or後
RDS-B2020/5/142020/4/30
BA2020/5/9※2020/4/27
JAL2020/3/272020/4/30
三菱ケミカル 2020/3/272020/4/28

(※ ボーイングについては、2020年の権利確定日は不明でしたが、2019年と同日として記載しています。)

米国企業は権利確定日前に減配・無配を公表しているのに対して、日本企業は権利確定日後に減配・無配を公表している』というのが、私がもやっとしていたポイントです。

権利確定日とは、株主としてのもろもろの権利(=株主の権利)を得るための確定日のことであり、権利確定日の取引が終了した段階で、株式を保有していると、配当金や株主優待を受ける権利が得られます。

そのため、権利確定日の翌営業日(=権利落ち日)には、配当金と株主優待の価値相当分程度、株価が下がります(理論的には)。

米国企業は、減配・無配にはなっているものの、事前に公表されています。もちろん全ての事例を調べたわけではないのですが、事前公表の事例がほとんどかと思います。

一方の日本企業については、まちまちですが権利確定日後に減配・無配を公表するケースが多いように思います。もちろん、減配だけではなく、権利確定日後に増配を公表するケースもあります。ただ、増配の場合は大体数%程度のことが多いですが、減配の場合は数十%のレベルになるので影響度がだいぶ異なりますね。

以上のことから、権利確定日時点で株を保有していたとしても、その時点ではいくらの配当金が得られるかは確定していないことになります。

日本企業の場合は、

・配当の支払いまでに権利確定日から3ヵ月程度あるので、業績の急激な悪化等に対応するため、権利確定日後に配当金額を修正する

・米国企業ほど、株主重視の姿勢が定着していない

等々理由はいくつか考えられそうですが、それでも権利確定日の段階で公表している数値を簡単に反故にするという姿勢は、あまり好ましくありません。

配当方針について

JALと三菱ケミカルHDについては、それぞれ配当性向を30%、35%程度にする、という会社としての配当方針を掲げていましたが、この方針が減配を招きやすくしていると言えます。

この2社だけではなく、大多数の日本企業は配当性向40%程度を上限に配当方針を策定しています。

配当性向を定めている場合のデメリット

配当性向の算出式は簡単で、

配当性向 = (1株あたりの)配当金額 ÷ (1株当たりの)当期純利益

そのため、当期純利益が大きく減少する、もしくは、損失を計上することになると、前期と同等の配当は支払えません。

当期純利益は、減損損失や投資有価証券評価損、税効果会計等の臨時要因の影響もすべて反映される項目であるため、ブレ幅が大きくなりがちです。

配当性向を一定割合に定めている場合は、この変動しやすい当期純利益に一定割合を乗じて計算することになるため、安定的な配当を行えないことがあります。

減配しない銘柄を選ぶためには?

減配・無配になる銘柄は可能な限り避けたいところですが、そのためにはどのように投資していけばよいのでしょうか?

累進配当銘柄に投資をする

三菱商事のように、そもそも決算説明資料等で対外的に累進配当政策を公表している企業が安心感有りますよね。

累進配当とは、『減配せず、配当を維持、もしくは利益成長に合わせて増配する配当方針のこと』

であり、減配しないと表明しているのと同義ですね。とても安心感があります。

配当方針としてDOEを採用している企業に投資する

毎期の当期純利益の増減に左右されずに、ある程度安定的に配当を行うために、

DOE(Dividend On Equity ratio=株主資本(純資産)配当率)を利用する企業が増えています。

計算式は下図のとおりとなります。

変動しやすい当期純利益を分子分母で相殺することで、最終的には 配当金額 ÷ 株主資本 という計算式になっています。

当期純利益ではなく、株主資本をベースにしているため、年度ごとに大きく変動しにくいという点が、安定配当に向いています。

もしDOEの詳細について、興味のある方がいらっしゃればこちらへどうぞ。

さいごに

累進配当やDOEを配当方針として掲げている企業がよいのでは?ということで、記載させていただきましたが、そもそもRDS-B(ロイヤルダッチシェル)は累進配当のようなことを謳っていたんですよね。

そう考えると、累進配当を掲げている企業であっても、絶対ということは無くある程度分散して投資を行っていく必要がありそうです。

投資は、自己責任で行いましょう。

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